- India Kashmir Texstyle /インド カシミール
- 2024年8月15日
Kani Weaving 刺繍以前から伝わる独特の織り技法『カニ織り』
この旅行で一番の楽しみは「カニ織り」工房見学です。シュリーナガルから約30km西へ行ったKANIHAMA(カニハマ)村に多くの工房があるようです。
パシュミナについての知識が少ないので全体での割合はわかりませんが、細密な『ソズニ刺繍』が施されたパシュミナが多くを占める中、わずかに『カニ織り』が含まれています。日本国内で流通している比較的安価な「カニ織りのパシュミナ」は素材の違いか?機械織りか?わかりませんが、この村で織られている『カニ織りのパシュミナ』はとても魅力的です。今回、その工房を見ることができるということで期待が高まりました。工房を訪問してみるとその大変さと価値がわかります。
-
学生時代は染織の中でも『織り』専攻、特に「ウールの手紡ぎ(紡毛)」の制作を好みました。しかし、経糸に撚りの甘い手紡ぎウールを使って織ることなど考えられず、結局は張りの強い綿糸を使う「つづれ織りタピストリー」や「ノッティング」などを手がけていました。
カニ織りは「カニ(ボビン)」と呼ぶ細い竹ひごのような枝にカラフルな糸を巻きつけ、図柄を部分的に織っていく方法で『つづれ織り』と同じ技法です。以前、バングラディシュで工房を見学した『ジャムダニ織り』も「つづれ織り」でしたが、素材が違うということと色使い、デザイン柄の扱い方が違います。後者は撚りの強い綿やシルク、ラメ糸を使い、デザインはパターン化したものを配置して織っていました。この内容を読むにあたって前のページの『ソズニ刺繍』とウズベキスタンの『スザニ刺繍』の類似についてもご覧ください。
- カニ (KANI)と呼ばれるスティック状のボビン
- カラフルな糸が巻かれたカニ。中央は緯糸用のシャトル(杼)。
- 代々伝わる図柄用のパターン スクリプト※。デザイン画ではなく『編み図』のようなもの
- 繰り返しデザインの場合はパターン スクリプトが重要
- カラフルなカニを並べて経糸に絡めてデザインを織っていく
- 織機に『デザイン画』と『パターン スクリプト』を置いて。織機一式
- 無地だけでなく、縦ボーダーに織り柄を配置するデザインも
- 旅行中はなにも入手はしないつもりだったが、色柄全て気に入って結局は手に入れてしまったカニ織りストール
※ 「パターン スクリプト」この組織図を現地ではタリム(Tarim)と云うようです。
(株)日本ヴォーグ社:毛糸だま vol.204 2024 [冬号] p36~39
世界手芸紀行(56)「インド」カシミールのカニ織
nukuiro 渋谷聡子さん/取材・文・現地写真