• Texstyle / Dyeing
  • 2024年5月12日

Kerria-Lacca Dyeing赤い染め色をもとめて④カイガラムシの『ラック(紫鉱)樹脂染め』

コチニール入手を画策している中で、ラック樹脂に出会いました。『紫鉱(しこう)染め』については何度か耳にしていましたが、染料として初めて目にしてトライすることになりました。
【紫鉱】は正倉院宝物にも収められていて宮内庁のホームページでも「種々薬帳に見える薬物。東南アジアに生息するラックカイガラムシが小枝に分泌した樹脂。薬用の用途は浄血剤など」と検索表示されました。

ラック樹脂とは、インドを含む東南アジアで古くから染料として用いられている赤いラックカイガラムシから分泌される天然の樹脂材とのことです。これもコチニールと同じカイガラムシに由来する染料材なのかと興味がでてきました。でもこちらはカイガラムシ本体ではなく分泌する樹脂の塊りの中にムシの体表から分泌される暗紫色の色素物質が入っているのだそうです。

  • 材料・薬品

    1. ラック樹脂:15g :市販セット品
    2. フィトカリ:3g:セット同梱品(天然ミョウバン)
    3. 浸染用錫液、浸染用チタン液:市販媒染剤
    4. 鉄媒染液、銅媒染液:市販媒染剤

    染材(精錬した絹糸)

    1. 緒糸(キビソ糸):各10g

    道具

    1. ホーロー鍋

  • アナンダさんの植物染めセット(ウール・シルク:100g程度染め可)

    植物染めセット

    1. ラック樹脂:30g
    2. フィトカリ(天然ミョウバン):6g
    3. ミロバランの実:植物繊維用助剤(今回は不使用)
    4. お茶パック(不織布)
    5. 染め説明書

ラック樹脂から染液を抽出

セットの説明書に「100g程度染められる」と記述があるので、コチニール同様半量で染めてみます。【ラック樹脂:15g】樹脂というように膠(にかわ)や松脂(まつやに)のような塊りの物質なのでハンマーで細かくします。樹脂片の中から木の小枝や樹皮のようなものが出てきましたが、全部をお茶パックに入れて染液を抽出します

  • 【ラック樹脂粉末パック:15g】【ぬるま湯:1500cc】で、80℃~90℃まで温度を上げて30分沸騰させずに煮出す。抽出するという感じではなく、お茶パックを投入後、すぐに濃厚な赤い染液となりました
  • 濃厚な抽出液だが、鍋の周辺に樹脂のような物が張り付いているのがわかる

染液の抽出方法は簡単に、ここで一旦終了

  • 染材をテープを色分けして各媒染剤で《先媒染》
  • 先媒染(フィトカリ/スズ/チタン)※タマネギと同じ

    1. 【水:1000cc】を加熱
    2. 80℃程度になったら【各媒染剤:3cc、同梱フィトカリ:3gは熱湯で溶かす】を入れ撹拌
    3. 染材(絹糸)を入れる
    4. 弱火でゆっくり温度を上げて30分ほど煮沸(沸騰させない)
    5. 火から降ろして冷却し絞る
    6. お湯でよく洗って脱水

ラック樹脂染めは赤色系ですが媒染剤による色の違いを確認するため《フィトカリ先媒染》《スズ先媒染》《チタン先媒染》《銅後媒染》《鉄後媒染》の5つの媒染剤のために染液は同浴で一緒に染めます。《後媒染》グループは30分ほどお湯に浸してから絞っておきます。

  • 《先媒染》田中直染料店「草木染薬品」浸染用錫液、浸染用チタン液
  • 《後媒染》誠和「草木染薬品」鉄媒染液、銅媒染液 ※すでに閉店されてます
  • ラック樹脂はキッチンペーパー(不織布)で漉す。今回は抽出1回のみで染めてみます
  • 抽出液に染材を入れる。80~90℃で30分浸染。媒染剤による色変化を見るために、テープを色分けして5本を一緒に染める。染まり具合が悪い感じがする

染液から取り出して水でよく洗って脱水。ラック樹脂抽出液での染め作業はここで一旦終了。
《先媒染》グループはここで完了。

  • 無媒染で染めた染材を各媒染剤で《後媒染》(参考:銅媒染)。無媒染での染まり具合が悪かったので、染まり具合はイマイチ。
  • 後媒染(銅/鉄)

    1. 【水:1000cc】を加熱
    2. 80℃程度になったら【各媒染剤:3cc】を入れ撹拌
    3. 無媒染で染めた染材(絹糸)を入れる
    4. 弱火でゆっくり温度を上げて30分ほど煮沸(沸騰させない)
    5. 火から降ろして冷却し絞る
    6. お湯でよく洗って脱水
  • 赤い染め色の『ラック樹脂染め』

    コチニールと同時に進めたので比較するとちゃんと浸透はしているがかなり染まり方が薄い感じがする。ペールトーンと考えるととても良い色に染まった。2度染めすると良いのか?1回の染料の量を増やせば濃く染まるのかは不明のまま終了です

    1. 《フィトカリ先媒染》浅緋(あさひ)というような桃色
    2. 《スズ先媒染》にごり味のある珊瑚色(さんごいろ)
    3. 《チタン先媒染》エンジがかったピンクグレー、梅鼠(うめねず)
    4. 《銅後媒染》色味の無い銀鼠(ぎんねず)グレー
    5. 《鉄後媒染》わずかに藤色がかったグレー。銅媒染より色味を感じる

Color Chartカラーチャート

赤い染め色の『ラック樹脂染め』

「ラック樹脂染め」はコチニールと同じように簡単に染めトライができました。ただ、全体にムラなく浸透していますが、色素の吸収が悪かったのか?かなり薄い染まりとなりました。《先媒染》はある程度赤く定着していますが、《後媒染》用に染めた無媒染の糸の染料吸収があまり良くなかったので《銅後媒染》《鉄後媒染》は色味の少ないグレーな仕上がりです

市販媒染液

  • 《フィトカリ先媒染》
  • 《スズ先媒染》
  • 《チタン先媒染》
  • 《銅後媒染》
  • 《鉄後媒染》

※このカラーチャートは私chackeeが染材の仕上がりを目視で数値化し、サイト表示したもので、あくまでイメージです。

PAGE TOP