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- 2025年5月25日
Phellodendron-Amurense Dyeing 黄色い染め色をもとめて①『キハダの木片チップ染め』
植物はカタカナ表記するのが一般的なのでここでは「キハダ」と書きますが、なぜか最初に思いだすのはマグロですね。しかし、ここでは染色に使う染料材なので樹木である『キハダ(黄檗、黄肌)』チップのこと。そして、その染めレポートです。
先日、材木関連業界で仕事をしている子供の頃からの友人に「最近、染色をしているよ」と話したところ『ヤマザクラ』と『キハダ』の木片を持ってきてくれました。『ヤマザクラ』は色が出そうもないほど堅いチップで染色するには少し時間がかかりそう。『キハダ』は今にも「染めてくれ」と言わんばかりの黄色いチップなので、まずは「キハダ」で染めてみることにしました。
「キハダ」はミカン科の落葉高木でかなり身近にある樹木らしいのですが、道端の木の樹皮を剥がすことなどはしないのでこんなに黄色い木があるのを知りませんでした。チップを嗅いでみると少しだけ酸味を感じる香りがします。内樹皮はオウバク(黄柏)という内服薬にもなる木なので薬メーカーでも研究対象になっているようですし、昔の仏教経典などの下染めに利用されるなど防虫効果も期待したらしいです。
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材料・薬品
- キハダの木片チップ:80g
染材(40g) の200% - ミョウバン:5g:漬物用で家にある物をお湯で溶いて使用
- 浸染用チタン液:市販媒染剤
- 鉄媒染液、銅媒染液:市販媒染剤
染材(精錬した絹糸)
- 緒糸(キビソ糸):各10g
道具
- ホーロー鍋
- キハダの木片チップ:80g
キハダチップから染液を抽出
もらったチップは80g、染材の200%として染めてみます。すでに黄色い表面がたくさん見えるチップ状になっているので、そのまま染液を抽出します
【キハダチップ:80g】【ぬるま湯:1000cc】で、80℃~90℃まで温度を上げて30分沸騰させずに煮出す。熱いうちに漉して冷ます。
キッチンペーパー(不織布)で漉す1番液
同じことを3回繰り返し抽出。左から1番液、2番液、3番液。1番液は少しクリア感があるがほぼ同じ色目
抽出した3回分を合わせる。かなり赤味のある染液が出来上がった
染液の抽出方法は簡単に、ここで一旦終了
染材をテープを色分けして各媒染剤で《先媒染》
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先媒染(ミョウバン/チタン)※タマネギと同じ
- 【水:1000cc】を加熱
- 80℃程度になったら【各媒染剤:5cc】を入れ撹拌
- 染材(絹糸)を入れる(事前に染材をぬるま湯で濡らしておく)
- 弱火でゆっくり温度を上げて30分ほど煮沸(沸騰させない)
- 火から降ろして冷却し絞る
- お湯でよく洗って絞る
キハダ染めは黄色系ですが媒染剤による色の違いを確認するため《ミョウバン先媒染》《チタン先媒染》《銅後媒染》《鉄後媒染》の4つの媒染剤のために染液は同浴で一緒に染めます。《後媒染》グループは30分ほどお湯に浸してから絞っておきます。
《先媒染》田中直染料店「草木染薬品」浸染用錫液、浸染用チタン液 ※今回はチタン液のみ
《後媒染》誠和「草木染薬品」鉄媒染液、銅媒染液 ※すでに閉店されてます
抽出液に染材を入れる。80~90℃で30分浸染。媒染剤による色変化を見るために、テープを色分けして4本を一緒に染める
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染液から取り出して水でよく洗って脱水。
キハダ抽出液での染め作業はここで一旦終了。
《先媒染》グループはここで完了。
無媒染で染めた染材を各媒染剤で《後媒染》(参考:銅媒染)。
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後媒染(銅/鉄)
- 【水:1000cc】を加熱
- 80℃程度になったら【各媒染剤:5cc】を入れ撹拌
- 無媒染で染めた染材(絹糸)を入れる
- 弱火でゆっくり温度を上げて30分ほど煮沸(沸騰させない)
- 火から降ろして冷却し絞る
- お湯でよく洗って脱水
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黄色い染め色の『キハダチップ染め』
かなり濃く抽出液が出来上がったので、期待通りの色に染めあがりました
- 《ミョウバン先媒染》わずかに青味のある黄色
- 《チタン先媒染》赤味のある黄色
- 《銅後媒染》黄緑といえる黄色。若草色
- 《鉄後媒染》《ミョウバン先媒染》の染め色にわずかに黒味を持たせた黄色
媒染効果が少なく2回目の鉄媒染を実施。黒味が少しだけ増した(写真は1回目)
Color Chartカラーチャート
黄色い染め色の『キハダチップ染め』
「キハダチップ染め」は日光堅牢度があまり高くないようですが、簡単に染めトライで濃い仕上がりにできました。最初から黄色く染まるということでの染めトライでしたが、わずかに青味を感じる染め色に驚きました。少しだけ青味があるため濁りを感じるよりクリア感を感じる仕上がりです。《ミヨウバン先媒染》は期待通りの黄色、《銅後媒後媒染》は若草色のような染め色の仕上がりです。ただ《鉄後媒後媒染》はもう少し深い黒味を持つと思っていたのですが《ミヨウバン先媒染》にほんの少しの黒味を感じる程度でした。そこで、改めて自作の《鉄媒染液》で2回目の媒染を実施してみました
市販媒染液
- 《ミョウバン先媒染》
- 《チタン先媒染》
- 《銅後媒染》
- 《鉄後媒染》
- 《鉄後媒染》2回目
※このカラーチャートは私chackeeが染材の仕上がりを目視で数値化し、サイト表示したもので、あくまでイメージです。